作品が語ると同時に作家自身の言葉も機知に富み、深遠な世界を垣間見せてくれる時がある。
それは作家自身のチベットでの出来事が印象的だ。
チベットの標高、空港の話から始まる、とめどなく出てくる言葉、広大な土地と満天の星、人の生死、作家を中心とした景色が広がる、その時点で宇宙と時空の連なりを感じさせてくれるのだ。
作品に反映されるのは作家自身のアトリエから見る湖に映し出される月の影、作家自身から生まれる色彩の反射、その光を捉え、作品に封じ込める、その手捌きは魔術師のようでもあり、料理をのせる為に作られたうつわは、料理を得意とする作家の言葉を引用するなら「木を調理し、光を味わう」かのような趣も感じる。
田中英一作 ササフネ 材質(ブナ)
「自分自身を道具として消耗するのが美しい」
変わらないものを不安だと、つまらないものだと語る、作品の完成度や質の高さから、不安という言葉と無縁だと思っていた作家のほんとうの言葉。
目で見えてるものや、言葉だけではわからない、読み解けない何かが作品に潜むのだ、
鑑賞することは、謎解きにも似てる、だけれども一番は使ってみることなのだと思う。
文・写真・燈tomori編集部
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